
ここしばらく、このブログの本題(?)である駅の紹介から遠ざかっていましたが、
今日からは駅紹介に戻したいと思います。
今日紹介するのは、先日撮影に行った
「ありがとうブルートレイン」企画で復活した「富士」撮影終了後に立ち寄った
肥薩線・
表木山駅です。
竜ヶ水駅からの帰り、再び
隼人駅まで立ち戻ったLMは、ここから肥薩線経由で帰路に着きました。
稚内まで旅立ったことのあるLMも、
肥薩線は初めての乗車でした。
その道中、どうしても訪問したいと思っていたのがこの表木山駅で、リバイバル「
富士」を追いかけた今回の旅行で、図らずも念願がかなうことになりました。


表木山駅待合所。
道路からほんの少し入っただけの場所ですが、それでも車で来た場合、
見落としてしまいそうなほど小さな建物です。
駅の正面、待合所の手前には、まるで
門番のように2本の木が立っています。
小さな建物ゆえ、トイレは付属していませんが、写真右手側に簡易トイレが設置されていました。
資料によると、表木山駅は1916(大正5)年、信号所として開業しましたが、その時には「
ひきやま」として呼ばれていました。
地名から行くと、どうやらこちらが正しい読み方のようなのですが、いつの間にか誤った読み方である「
ひょうきやま」という呼び方が広まってしまったらしく、1920(大正9)年、晴れて駅として昇格した時には「ひょうきやま」になってしまいました。


待合所内部。
小さいながらも、椅子はある程度用意されています。
室内は、ゴミや汚れもなく、清掃が行き届いていて清潔です。
九州特有の開放的な駅舎で、真夏にも関わらず熱気もそれほどこもってはいませんでした。
しかし、冬は寒そうですね。
特にこの周辺は、いくら南国とはいえ、やや標高の高い場所ですから・・・。

ホーム側から撮影した待合所。
山深い小さな集落の片隅に駅はあります。
駅前にも数軒ほど人家が見受けられ、道路を挟んですぐの花壇には美しく花が咲いて手入れも行き届いているのですが、周囲はシーンと静まり返り、
人気は感じられませんでした。
列車が発着するほかは、時折駅前の道路を往来する車と、低空を飛行する飛行機くらいが人工的な“騒音”で、他には虫の音など以外、
ほとんど音らしい音が聞こえてきません。
しかし、駅でのんびりくつろぎたいLMにとっては、
ゆったりするのに最適の駅でした。



表木山駅ホーム(人吉・八代方面)。
目に映る
人工的なものといえば列車か駅に関係する施設くらいで、他は自然に包まれています。
いや、“自然に包まれた”というより、“
自然が押し寄せている”ような駅とも言えます。
南国の太陽を受け元気な草木は、放っておくと、
駅でさえたちまち緑の中に埋め尽くしてしまいそうな勢いを持っています。

ホームの外れ、人吉側に設けられた構内踏切。
上り・下りホームをつなぐ、
唯一の連絡通路です。
それにしても、
周囲はどこを見ても草木と山ばかり。
構内踏切の奥に普通の警報機・遮断機つきの踏切がありますが、
そんなものがあることが不思議なくらい、自然に囲まれた世界が広がっています。

表木山駅ホーム(隼人方面)。
元々、肥薩線は
鹿児島本線として建設された路線でした。
しかし、後に八代から水俣、出水、川内をつなぐ海沿いの“
西回りルート”の新線が開通してからは、そちらに鹿児島本線の名を奪われ、この路線は肥薩線と言う
ひなびたローカル線に転落しました。
ところが、鹿児島本線の栄誉を譲り受けたはずの西回りルートは、九州新幹線の開業によって主要な路線としての役割を失い、八代-川内に至ってはJRから分離され、
肥薩おれんじ鉄道として厳しい運営を強いられることに。
反面、肥薩線には
特急が入線するようになり、八代-人吉には
SLまで運転されるようになりました。
一時は苦しい立場に追いやられたこの路線が、
観光資源を見直されて頑張っていることを考えると、本当に鉄道路線にも“
塞翁が馬”ということわざが当てはまることがあるようです。
話が表木山駅から大幅に逸れましたが(汗)、
元々が本線の駅(開業当時は信号所)として開業したせいか、
長大なホームを誇っています。
しかし、かつてはそこにあったかもしれない賑わいも、今はそこにありません。
現在はただ
夏草が幅を利かせ、ホームの大半を占拠してホームを賑わせるのみです。

下りホームにある待合所。
周囲は
ヘビが出てきやしないかとヒヤヒヤするほど(汗)草が覆い茂っています。
待合所の背後にも、あふれんばかりの夏草の群が迫っています。

表木山駅で行き違う列車。
下りホームを悠然と通過するのは、特急「
はやとの風」です。
かつて信号所として営業を開始したことが影響してか、こんな山中の小駅であるにも関わらず、この駅は列車交換施設を有しています。



すっかり
夏草に埋もれた線路とホーム。
去っていく列車を見ていると、このまま
山の中に線路と列車が飲み込まれるのではないか、と不安になるほど・・・そして、列車がいない時は、
廃線跡の廃駅に来たのかと思うほど、線路にもホームにも夏草がはびこっています。
自然に囲まれて暮らしていると分かることですが、
自然はいつも優しくばかりはなく、時に厳しい存在でもあり得ます。
この駅も、人工的な
“駅という名の異物”の存在を草木に沈めて抹消しようと押し寄せる自然と、日夜戦い続けているのかもしれません。
・・・南国の強烈な日差しを浴びながら、人工的騒音が皆無の自然の中で一人佇んでいると、そんな“
幻想”が頭の中に浮かんできてしまいました(苦笑)。
ともあれ、大正時代に開業したこの駅は、信号所時代を入れれば既に
開業93年目(2009年現在)を迎える歴史ある駅であり、自然の猛威と時に調和し、時に戦いながらも、しっかりとここに“
あり続けてきた”のです。
これからも、この駅がそこに“
あり続けて”くれることを祈りつつ、名残を惜しみながら、LMはこの駅を後にしたのでした。
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テーマ:駅の風景 - ジャンル:旅行
- 2009/09/22(火) 00:00:01|
- 駅探訪
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| コメント:2
こんにちは。
いつもコメントありがとうございます。
> 僕の あの長靴 貸してあげましょう
> ヘビがいても 大丈夫ですよ
確かにアレがあれば安心して探索できますね。
それを装備していたら、もう少し違うアングルを発掘できていたかな・・・。
> 肥薩線は 真幸駅以南は 知りませんので
> いずれ うろつきたい そう 思ってます
ぜひその成果を見たいものです。
お山からの美しい俯瞰光景を、ね(笑)
- 2009/09/23(水) 10:17:51 |
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