
久しぶりの駅紹介となります。
今日は、写真が少し前のもの(平成27年8月)になってしまいますが、
石北本線の
金華駅をご紹介したいと思います。
これまでの駅紹介と少し違うのは、金華駅は「
もうすぐ廃止される運命」にある駅だということです。
金華駅は、これまでも何度か列車の中から眺めてきており、訪問したい駅のひとつでした。
とはいうものの、これまで石北本線方面に行くときはどうしても白滝周辺(特に
下白滝駅)と
石北臨貨に時間をとられる傾向にあり、なかなか訪問できませんでした。
しかし、
ネットのニュースで金華駅が廃止されるという記事を見て、いよいよ猶予がなくなったと感じ、この
夏の北海道旅行に何とか行程をねじ込み、立ち寄ることにしたのです。

金華駅駅舎。
駅は
北見市留辺蘂町に所属します。
駅の歴史は大正時代にまでも遡り、1914(大正3)年に
湧別軽便線の
奔無加(ぽんむか)駅として開業したのが始まりです。
旧駅名である奔無加という難解な名前は、
北海道ではおなじみのアイヌ語由来の地名で、その語源は「ポン、ムカ」(小さいムカ川)から来ているそうです。
その後、1922(大正11)年に所属する鉄路が湧別軽便線から湧別線へ、さらに石北線に編入され(国有化は1949年)、駅名自体も1951(昭和26年)に金華駅へと改称されました。
なお、現在の地名「金華」は、かつて近くに住友
鴻之舞鉱山の
金華支山があったことに由来すると言われています。
駅の周囲は数軒の人家があるものの、廃屋も見られるなど人気はほとんど感じられません。
山に囲まれた場所にある地勢もあって静かな環境で、
秘境駅としての雰囲気満点です。


ホーム側から見た駅舎。
駅舎は1934(昭和9)年に改築されたものだそうです。
正面側もそうですが、あちこちに補修の跡が残され、駅舎の壁はパッチワークのようになっています。
ただでさえ厳しい北海道の自然環境の中で、
常紋峠に近い山間の地という過酷な環境が駅舎を蝕んだということなのでしょうか。
そのため、木造駅舎らしい風合いを若干失っていますが、厳しい環境にさらされつつも駅舎としての機能を維持し耐え抜いてきた、
名誉の“傷痕”と見ることもできるでしょう。


駅舎内部。
駅舎自体大きくて堂々とした造りですが、待合室も広々しています。
変な例えですが、この周辺に住む全ての住民をこの待合室に集めたとしても、まだ余裕があるでしょう。
今となっては、利用者(というより、住民全体の)数に対して完全に“オーバースペック”状態の駅舎ですが、この駅舎が立てられた当時はこれくらい大きな待合所が必要なくらい地域の住民が多かったのでしょうか。
ただ、こちらは書籍等での裏付けがないものの、前述した地名の由来でもある住友鴻之舞金山金華支山は昭和の初めごろ活況を呈しており、地元もその恩恵にあずかって旅館まであったという話が残っているほどなので、駅舎が改築された昭和9年頃は、駅の周囲も賑わっていたのかもしれません。
こんな山間の小駅にも、栄枯盛衰の歴史があるものですね。




金華駅ホーム(遠軽・旭川方面)。
ホームから延びていく鉄路の先には、石北本線有数の難所・
常紋峠と、そこを貫通する
常紋トンネルがあります。
常紋トンネルは、金華駅と同じ1914(大正3)年に開通したトンネルですが、
過酷な環境から工事は難航。
それに加えて、
タコ部屋労働による厳しい労働環境は想像を絶し、働けなくなることは死を意味しました。
この自然環境と労働環境のどちらも極限の厳しさの中、大勢の労働者が倒れていきました。
その犠牲者の魂を弔うための「
常紋トンネル工事殉難者追悼碑」が駅の近くに建てられています。


金華駅ホーム(北見・網走方面)。
金華駅は2面2線(他に使われていない側線が1線)の配線となっており、列車交換が可能な駅となっています。
こんな辺鄙な場所にある駅にもかかわらず列車交換設備があるのは、やはり常紋峠という難所を控えているからなのでしょうね。
駅舎反対側のホームは島式ホームですが、駅舎側のホームは崩されており、
事実上片側のみの運用となっています。
この崩されたホームを見ていると、この駅は既に廃駅なのではないかと感じさせるものがありました。
ホームのすぐ近くまで木々が迫っていますが、駅には
熊が出没しているため注意を促す張り紙があり、撮影していても木々の隙間から「
ガサガサ」という音が聞こえてきはしないかと、気が気ではありませんでした(汗)。


LMはこの駅に来るまで全然知らなかったのですが、この駅始発着の列車があったのには驚きました。
こんな秘境駅を始発にしても乗客が期待できるとは思えないので、列車運行上の都合か何かなのでしょうが。
ただ、撮影時は8月で
青春18きっぷの期間内であったこと、また金華駅の廃止がネット上に掲載されて間もない時期であったこともあってか、LMが滞在していたときにちょうど入線してきた
4652D(折り返し
4657Dとして運転)からはバラバラと数人客が降り立ち、盛んに駅の写真を撮っていました。
LMはその時点で撮影が終わっていましたし、皆さんの邪魔にならないよう少し離れた場所から眺めていましたが、その様子を見ていると
この駅の廃止がいよいよ間近に迫っているのだと、実感させられた気がしました。
100年以上にわたって鉄道利用者を見守ってきたこの駅――金華駅は、平成28年 3月26日のダイヤ改正をもって廃止され、その長い歴史にピリオドを打つ予定です。
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テーマ:駅の写真 - ジャンル:写真
- 2016/01/19(火) 00:00:01|
- 駅探訪
-
-
| コメント:4
一つ、又一つとこうして消えていくのですね。
それも時代の流れで仕方の無い事とはいえ、
この土地や駅舎に思いのある人にとっては辛く寂しい事ですね。
駅舎に暖房施設が見当たらないのは、
一日の電車の発着数や利用者数の激減のため・・・
そういうことだったのですね。
- 2016/01/19(火) 11:10:35 |
- URL |
- 喜多さん #-
- [ 編集 ]
喜多さん 様
こんばんは。
コメントありがとうございます。
> 一つ、又一つとこうして消えていくのですね。
> それも時代の流れで仕方の無い事とはいえ、
> この土地や駅舎に思いのある人にとっては辛く寂しい事ですね。
寂しいことではありますが、これも時代の流れのこととて、やむを得ないのでしょうね。
いつ誰が乗り降りするかも分からないような駅に、いつまでも維持費をかけておくわけにはいかないのでしょうし。
ましてや北海道は冬季の積雪がありますから、その除雪等だけで相当の経費がいるでしょうから。
もっとも、金華駅は駅としては歴史を終えても、常紋トンネルに間近い要地であることから、その駅舎と施設は信号場として生き延びるのではないかと考えています。
> 駅舎に暖房施設が見当たらないのは、
> 一日の電車の発着数や利用者数の激減のため・・・
> そういうことだったのですね。
客も来るか来ないか分からないというのもありますが、それ以前に駅が無人(駅員が不在)ですからねぇ。
北海道の厳しい寒さがあるにも関わらず駅が暖房なしなんて・・・と昔は思っていましたが、今は慣れました(苦笑)。
- 2016/01/19(火) 23:53:18 |
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- #-
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この駅は発着便がある以外にも、待ち合わせでの停車時間がある列車が多いですね。
恐らくは運行上重要な駅なんでしょう。
駅としての営業は終わっても、交換設備としての役目は続いて行くのかな、と想像します。
まだ実現していない北海道の妄想旅プランでも訪問地に入れていた金華駅、
現役のうちに見られなくなるのは残念でなりません。
- 2016/01/21(木) 08:26:51 |
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- ねじまき #-
- [ 編集 ]
ねじまき 様
こんばんは。
ご無沙汰しております。
コメントありがとうございました。
> この駅は発着便がある以外にも、待ち合わせでの停車時間がある列車が多いですね。
> 恐らくは運行上重要な駅なんでしょう。
> 駅としての営業は終わっても、交換設備としての役目は続いて行くのかな、と想像します。
でしょうね。
生田原~金華間は15km近くありますし、難所の常紋峠もあることから、列車交換の施設としてはこれからも重要だと思います。
奥白滝などのように信号所として生き残りそうですけどね。
> まだ実現していない北海道の妄想旅プランでも訪問地に入れていた金華駅、
> 現役のうちに見られなくなるのは残念でなりません。
あれ、そうですか。
もう以前に訪問されたものと思っていました。
訪問する前に現役で見れなくなるのは残念ですよね。
私にとっては、奥白滝がそのパターンでした。
- 2016/01/22(金) 22:54:54 |
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