[ 遠軽町(旧白滝村) 国道333号沿線 ]



以前、
夏の終わりに訪問した際に歩いた、上白滝駅までの道程。
最愛の人の遺影を胸に、この日、再びその道を踏みしめた。
同じ道、同じ大地なのに、世界は白銀に染め上げられ、全く別の世界のように見える。
それでも、白滝の大地は美しかった。
寒さが増しても、風が叩きつけても、苦にはならない。
ただ、銀世界のこの地を、あの人と共に歩ける喜びだけが、LMを支配していた。

周囲に人家もなく、道は雪に埋もれ、誰も通りそうにない踏切。
それでも列車が来ると、踏切は己の義務を忘れず、高々と警報をかき鳴らし、赤灯を点滅させる。
「鉄道」という巨大な仕組みの中で、踏切などちっぽけな“歯車”にすぎない。
だけれども、その歯車がひとつでも狂ったり、欠け落ちたりすれば、安全は損なわれてしまう。
だからこそ、踏切は、脚光を浴びぬ歯車に甘んじて、誰も見ていなくても、ただ黙々と働き続ける。
そんな踏切が安全を守る鉄路を、列車は一瞬で駆け抜けていった。
[ 石北本線 上白滝駅 ]


雪を蹴飛ばし、風を押しのけて進むLMの前に、
上白滝駅が姿を現す。
しばらく駅前に佇み、余韻に浸っていると、今まで雪で白んでいた空が不意に開け、青空が姿を見せた。
雪の中、この駅に再会するためだけに、徒歩でここまで来たLMに報いるかのように。
上白滝の空は、これまでで一番美しい空で、LMを迎えてくれた。

青空は間もなく雪雲で閉ざされ、世界はみるみる白く染まってゆく。
やがて、雪が吹き荒れ、風が窓を叩き出す。
待合室に腰をおろして、その光景を見詰めるLMには、それが言葉にはできない不思議な愉悦の時間に感じた。
[ 遠軽町(旧白滝村) 国道333号沿線 ]

タクシーで
発祥の地に立ち寄った後、下白滝への道を再び徒歩で進む。
白滝の地は、次第に雪が強まり、風は荒れ狂い、世界は吹雪に閉ざされた。
寒さに慣れたLMにも、強風を伴うこの吹雪は厳しいものだった。
北の自然が、LMに牙をむいた瞬間だった。
[ 石北本線 下白滝駅 ]


救いの
下白滝駅が見えてきたのに、そこまでなかなかたどり着けない。
容赦なく吹き付ける吹雪に、前に踏み出す足が重く感じる。
体感温度はみるみる下がり、服は雪で固められ、息継ぎさえ苦しい。
ほんのわずかな距離が、苦難の道に感じる。
命の危機さえ感じる強行徒歩行軍を経て、転げこむように下白滝の駅舎へ逃げ込んだ。




駅の外は、完全に吹雪で覆い尽くされていた。
四方八方、雪、雪、雪・・・。
列車さえ止めたほどの吹雪は、世界を白く染めて、ひたすらに降り続ける。
それは、ヒトが抗う事のできない、どこまでも厳しい自然の発露。
しかし、一方で、その景色は、蠱惑的なまでに美しい情景だった。


やがて、不意に雪は止み、空に太陽が戻ってきた。
太陽の暖かい温みが、凍りつきそうだったLMの心と体を優しく溶かしてゆく。
太陽のありがたさを、改めて実感した瞬間だった。


下白滝を通過してゆく
特急「オホーツク」。
道中の苦闘を物語るように、その面は雪で覆い尽くされていた。
雪煙を上げ、北国の列車は、今日も厳しい自然に立ち向かう。

楽しい時間は、あっという間に過ぎ去る。
楽しい旅行も、あっという間に終わる。
短い滞在日数だったけれども、冬の北海道の情景を十分に堪能できた。
この時感じた感動は、写真と共に、LMの心にいつまでも残り続けるだろう。
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テーマ:北海道 - ジャンル:旅行
- 2012/04/20(金) 00:00:01|
- 鉄道旅行
-
-
| コメント:4
前期高齢者様
こんばんは。
コメントありがとうございます。
> ピンキリ というか 天国と地獄というか
> 両方のすんごい天候のなかですね
そうですねぇ、こんなに一日で天気が変わるものだとは・・・。
一時はかなり危険なところまでいきましたからねぇ、いやホント(汗)。
> 僕はいつも このあいなかくらいでしたから
> ちょっとうらやましいです
命を危険にさらしても、私の環境が羨ましいですか?(笑)
> こんな時を過ごせたのなら
> 旅費 安いもんだわ
> また行きたくなるよねぇ
まあ、さすがに安くはない・・・ですがねぇ(苦笑)。
お金には代えられない体験をさせていただきましたよ。
今回は、他の用事のついでにいけたので助かりましたけれども。
かなり旅費をカンパしてもらっている状況です、現状では(汗)。
- 2012/04/21(土) 03:20:14 |
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- #-
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下白滝は 空が広くて高くて 晴れてる日はとてもすがすがしいんですが
谷を下る風がひとたび吹くと あんなふうになってしまいます(^^;)
反射テープ必要ですよ(^^)
旧白滝は もともとここに凍らない湧水が湧いていたこともあって
最初の入植地に選ばれただけのことはあり、ムラの中では一番あたたかいです
白滝と上白滝では気候が違います 標高が高くなっていきますから
上白滝だけふぶいてるってこともよくあります
奥白滝から上越はロシア並みの気候です 標高500越えの山の中なだけのことはあります
ご滞在の間に いろんな風に会えましたね
今週末で 今季の貨物が終了します
また予定通り 夏に再会されることを願ってます
- 2012/04/24(火) 08:49:12 |
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- Jam #-
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Jam様
こんばんは。
コメントありがとうございます。
コメントに気付くのが遅れ、レスまで遅れて失礼しました(滝汗)。
> 下白滝は 空が広くて高くて 晴れてる日はとてもすがすがしいんですが
> 谷を下る風がひとたび吹くと あんなふうになってしまいます(^^;)
> 反射テープ必要ですよ(^^)
そうですか。
確かに、下白滝は空が広いですよね。
既に、今の私は、下白滝の空を求めています・・・。
> 旧白滝は もともとここに凍らない湧水が湧いていたこともあって
> 最初の入植地に選ばれただけのことはあり、ムラの中では一番あたたかいです
そうだったんですか。
冬季に凍らない水が得られるというのは、そちらのような地勢ではとても大切なことですよね。
> 白滝と上白滝では気候が違います 標高が高くなっていきますから
> 上白滝だけふぶいてるってこともよくあります
> 奥白滝から上越はロシア並みの気候です 標高500越えの山の中なだけのことはあります
奥白滝から先は行ったことがありませんが・・・。
確かに、列車の窓から見ると、かなりヤバそうな光景ですね(苦笑)。
列車が通うのが不思議なくらいです。
> ご滞在の間に いろんな風に会えましたね
はい、いろいろな光景に会えました。
大変だった部分もありますが、個人的にはどんな景色も好きで、心に残っています。
白滝の土になってもいいくらいです(笑)。
> 今週末で 今季の貨物が終了します
> また予定通り 夏に再会されることを願ってます
そうですか・・・もう、石北貨物の終わりの時期でしたね。
とりあえず、今年はまた再会できそうですが・・・。
いつまでと言わず、ずっと走り続けてほしいですね。
- 2012/04/25(水) 10:52:07 |
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