
本日の駅紹介は、
芸備線から
備後八幡駅をご紹介します。
“八幡”には「はちまん」「やはた」などいろいろな読みがありますが、ここでは「やわた」と読むようですね。
広島県でも東端にあたる
庄原市東城町にあるこの駅は、中国山地の奥深くにひっそりとたたずむ駅です。




備後八幡駅駅舎。
開業当時からの風情ある木造駅舎が残されています。
ただ、実際には“開業”よりも前に駅舎は完成していたようです。
というのも、駅舎に残された建物財産標によれば、竣工は1934(昭和9)年9月。
対して、芸備線の前身である
国鉄三神線の東城-小奴可間が延伸開業したのは1935(昭和10)年6月のことだからです。
ともあれ、80年弱の長い歴史を刻んできたわけですね。
現在の駅舎は、箱形の小さくて可愛らしいような駅舎ですが、当初からこの形だったわけではありません。
昔は、もっと横に長い、長方形の風格ある駅舎だったようです。
しかし、以前紹介した
藤山駅同様、
事務室部分が破却され、待合室部分が残された結果による“
縮小駅舎”なのです。
1983(昭和58)年、この駅が無人化(切符の販売は近くの簡易郵便局に委託化)されたことに伴う措置なのでしょう。
今の駅舎も悪くありませんが、以前の堂々たる駅舎も見たかった気がしますね。
駅舎の左隣には、まるで
この駅を守護するように大きな木(あまりに大きすぎ、写真に入りませんでした・・・)がそびえ立っているのが印象的です。
また、右側には桜がありますが、もう4月も終わりというのに、まだ花を残していました。
中国山地奥深くにある駅だけに、春の訪れも遅いのでしょうね。


ホーム(線路)側から見た駅舎。
小さな駅舎にも関わらず、立派なひさしとそれを支える柱の組み合わせは、堂々としたものを感じさせます。
上の写真を見ていただくと分かりますが、他の三方の壁に比べ、備後落合側の壁は不自然な“
のっぺらぼう”状態です。
上記した通り、これが
事務室部撤去の名残のようです。
下の写真で、駅舎の隣には便所がありますが、これもまた開業当時からと思われる年季の入った建物です。
また、駅舎の右端に「ご利用ありがとうございます」という看板がかかっているのが見えますが・・・。
写真では分かりづらいですが、この「ご利用」の上に
「国鉄」と書かれていたのを消したと思しき形跡がありました。
そんな所も、この駅の歴史を感じさせてくれます。

駅舎と便所の間にある小さな木戸。
こんな何気ない物にも、この駅舎の歴史が詰まっているような気がします。


駅舎内部。
外観に比べ、待合室はかなり広く感じられました。
これは、事務室等が撤去されているため、駅舎=待合室となっているためでもあるのでしょうね。
駅舎内は塵ひとつ落ちておらず、目立った汚れもなく、とてもきれいに清掃されていました。
また、ドアや窓はサッシになっており、やや風情を損なっている感はあるものの、しっかり戸閉ができます。
夜間は消灯されることもあり、こういう
田舎の駅ではありがちな虫の入り込みも少ないようでした。
この駅は、ありがちなプラスチック製の椅子ではなく、
木製の長椅子が残されています。
そして、この長椅子が、大いに役に立ちました。
というのも、LMは前夜、この駅で“
駅寝”をさせてもらったからです(汗)。
訪問日は1日限定、しかも、翌日は仕事――という窮屈な日程では、前夜から夜を徹して走ってこざるを得ませんでした。
九州西部からひたすら走り抜くこと6時間余、深夜にようやくこの駅までたどり着きました。
とは言え、最初から駅寝する計画だったわけではなく、当初は車の中で仮眠をとる予定だったのです。
(夜のうちに到着したのは、訪問時間が限られているため、翌朝早くから撮影しようと考えていたため)
しかし、実見してみると、
駅舎内部の状態がとても良かったので、寝袋を持って長椅子で寝ることに。
木製の椅子のため、やや硬くは感じましたが、それでも
体を伸ばして眠れるのは助かります。
シンと静まった駅舎内部に、
外から聞こえるカエルの合唱が印象的な夜でした。
・・・ただ、夜中、
電気が完全に消えた便所に行くのは、正直ちょっと怖かったですね(汗)。
関係ない話ですが、この駅舎撮影では、久々に
広角レンズが大活躍してくれました。
まあ、元々が
駅舎撮影のために買ったようなものですからね・・・。
このレンズをもっともっと活用して、駅紹介の記事を充実させねば・・・。


備後八幡駅構内(備後落合・三次方面)。
現在は
1面1線の単純な棒線構造ですが、写真でも見受けられるとおり、
以前は2面のホームがあったようです。
駅舎反対側のホームは、若干草に埋もれ気味ながらも、まだまだしっかりした姿を残していました。
駅舎側からちょっと見た目には2面2線の交換可能駅かと思われたのですが、よく見たら線路が切れていました・・・。
これでも、10年くらい前までは、列車交換が行われていたようです。
しかし、2012年5月現在、備後八幡駅を発着する列車は、
芸備線内でも最小の3往復のみ。
これでは、
交換施設など不要と思われても仕方のないところでしょう。
上の写真に写る列車は、その数少ない列車の一本(新見行き/
442D)ですが、乗客数はゼロ・・・。
その前に撮影した列車(備後落合行き/
441D)も乗客は一人もいませんでしたし・・・。
もちろん、この日は学校・仕事が休みだったということを考慮に入れるとしても、
この付近の鉄道事情の厳しさを感じさせられます。
比較的列車本数の多い広島-三次間と比べると、格差が激しすぎますね・・・。
LMも、駅寝までさせてもらった以上、ぜひとも“
御礼乗車”をしたいと考えていたのですが・・・。
あまりにも厳しすぎる(ある意味、
三江線よりも厳しい)ダイヤ設定のため、あきらめざるをえませんでした。



備後八幡駅構内(東城・新見方面)。
事前の調査では、もっと周囲に人気のない所かと思っていましたが、思ったよりも人家はありました。
もっとも、山沿いの小さな集落といった程度ですが・・・。
ただ、駅周辺は
閑静な空気に包まれています。
ひとつは、駅周辺にある家が無人だからでしょう。
LMは詳しく調査できませんでしたが、資料によれば
駅前には廃屋となった鉄道官舎があるとか。
今は寂れた駅ですが、有人だった以前は賑やかな駅だったのかもしれませんね。
さて、当初、この駅を見た限り、以前は2面2線だったろうという推定をしていました。
しかし、こちらから見てみると、どうやらもう1線あるらしいことが判明しました(写真下)。
つまり、当初は2面3線(もしくはそれ以上?)で、駅舎反対側のホームは単式(対面式)ホームではなく、島式ホームだったわけです。
もっとも、一番外側の路線は、駅舎寄りの2線に比べて荒れており、使われなくなって久しいようですが・・・。
以前は貨物側線があったそうなので、これがそうなのかもしれません。


今回の芸備線の駅訪問で、備後八幡駅は一番時間をかけたのですが・・・。
残念ながら、満足には探訪とはいきませんでした。
しかし、時折撮影の手を休めてゆっくりと駅に座ってみると、
とても心地よい雰囲気を感じました。
どこか時間が止まっているかのような、のんびりした空気が流れる備後八幡駅。
機会があれば、ぜひとも再訪したい駅ですね。
願わくば、次回はもっとじっくり探索したいものです。
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テーマ:駅の風景 - ジャンル:旅行
- 2012/06/03(日) 00:00:01|
- 駅探訪
-
-
| コメント:6
おじゃましま~す
きょうの記事はボリュームすっごいなぁ
読んでて 勉強中のあの“睡魔”を思い出したぞ
このあたり 広くは中国地方のローカル線に冬に行きたくてたまりません
車のタイヤだけは四駆のスタッドレスなんで
なんとか なんとかです
この路線 三江線 因美線 他
若桜鉄道など 枚挙にいとまがないくらい
魅力的な路線ばかりです
そのうち 山口線や日田彦山線 久大本線などには 僕はもういないかも ・・・(笑)
駅の資料はここのブログで間に合うから
大変助かります
居眠りしないで 勉強します
- 2012/06/03(日) 20:43:17 |
- URL |
- タブレット #-
- [ 編集 ]
タブレット様
こんばんは。
この名前では初めましてですね(笑)。
コメントありがとうございます。
> きょうの記事はボリュームすっごいなぁ
> 読んでて 勉強中のあの“睡魔”を思い出したぞ
すみませんねぇ、つまらない記事を長々と書いて(T-T)
> このあたり 広くは中国地方のローカル線に冬に行きたくてたまりません
> 車のタイヤだけは四駆のスタッドレスなんで
> なんとか なんとかです
その時はぜひ私もお供に加えてください。
私も冬に行きたくて仕方ないんですよ、この辺り。
もちろん自力で行ける場所じゃないですし・・・。
列車で行こうにも、ダイヤは死んでますし(滝汗)。
> この路線 三江線 因美線 他
> 若桜鉄道など 枚挙にいとまがないくらい
> 魅力的な路線ばかりです
まあ、そうですね。
季節を選べば、この辺りの景色は素晴らしいものですよ。
冬は私も見たことがないですが、中国山地の奥深くなんで、北海道にも負けない雪景色となることも少なくないようですよ。
> そのうち 山口線や日田彦山線 久大本線などには 僕はもういないかも ・・・(笑)
いや、行かれるのはいいですが、この辺りは遠いですからね・・・。
雪が降ってても降ってなくても、運転には気を付けてくださいよ。ホント。
> 駅の資料はここのブログで間に合うから
> 大変助かります
> 居眠りしないで 勉強します
私のブログでどの程度のことがわかるか不明ですが、役に立つならどうぞ。
でも、他もちゃんと当たらないとダメですよ。
- 2012/06/03(日) 21:23:33 |
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- #-
- [ 編集 ]
こんばんは コメントありがとうございます
いつも拝見してます 私はあまり いや全然鉄道は詳しくないけど 鉄道 好きです(乗るのも撮るのも)ので LMさんのブログ拝見させて頂くのが いつも楽しみですよ~
リンク どうぞ 私も貼らさせて頂いていいですか よろしくお願いします
- 2012/06/04(月) 03:37:42 |
- URL |
- チャリ・h・プー #-
- [ 編集 ]
これだけ旅をしているんですから、俳句作ったらどうですか。記録にもなりますよ。第一、旅の楽しみが増えます。お奨めです。私も今度、お撮りになった写真を元に俳句作ってみますよ。
- 2012/06/04(月) 17:47:34 |
- URL |
- スキップ #-
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チャリ・h・プー様
こんばんは。
コメントありがとうございます。
> 私はあまり いや全然鉄道は詳しくないけど 鉄道 好きです(乗るのも撮るのも)
詳しくなくても、鉄道は楽しめますよ。
正直、私も知識の面となるとあやふやなものですし(滝汗)。
ぜひ鉄道に乗って、新しい世界を広げてくださいね。
> リンク どうぞ 私も貼らさせて頂いていいですか よろしくお願いします
リンク御了承いただき、ありがとうございました。
そちらからのリンクは、もちろん大歓迎です。
こんな写真も文章もヘボのブログでもよければ、ですが(汗)。
これからもよろしくお願いいたします。
- 2012/06/05(火) 00:22:30 |
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スキップ様
こんばんは。
コメントありがとうございます。
> これだけ旅をしているんですから、俳句作ったらどうですか。記録にもなりますよ。
> 第一、旅の楽しみが増えます。お奨めです。私も今度、お撮りになった写真を元に俳句作ってみますよ。
いやあ、俳句(川柳含む)自体は好きなんですが・・・。
私には、発句の才能がないものと見えて、全然作れません(汗)。
そもそも、五七五になりません・・・。
俳句をされる方は素晴らしいですね。
あれだけの文字の制限の中で世界を作るのですから。
まさに言葉の魔法ですね。
- 2012/06/05(火) 00:27:15 |
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